札幌家庭裁判所岩見沢支部 昭和44年(少ハ)4号 決定 1969年6月06日
本人 A・B(昭二四・三・一八生)
主文
上記在院者の収容を昭和四四年六月三〇日まで継続する。
理由
(1) 本件申請の要旨は、「上記在院者は、昭和四三年六月一〇日、札幌家庭裁判所岩見沢支部で、中等少年院送致の決定を受け、同月一五日から北海少年院に収容中のものであるが入院以来、職業訓練法に基づく職業訓練の過程の木工科に編入されているものであつて、成績もよく、将来同法所定の技能検定を受けることとなるところ、同人が昭和四四年六月九日に少年院法一一条一項但書の規定により満期退院することとなれば、上記検定受験資格取得の一つの要件である職業訓練修了のための必要最低時間数を割ることになるのである。同人の退院後のことを考えると、上記受験資格を得ることは是非必要であるので、そのために必要な同年六月三〇日までの期間、その収容継続すべき旨の決定を求める」というのである。
(2) 上記在院者(以下単に「在院者」という)にかかる社会記録および審判における同人および担当教官の供述によれば、上記の事実はすべてこれを認めることができるほか、在院者が上記少年院で職業訓練修了の証書を取得すれば、退院後二年間実務を行なうだけで、二級の技能検定資格を得られることになり、また、もしこの検定に合格すれば、その後の就職先や勤務条件などきわめて有利な立場に立つことになること。在院者が、この木工科(家具製造の訓練を受けている)の仕事に大きな興味を抱き、これを将来の仕事にしていきたいと張り切つていて、上記職業訓練修了の証書がもらえるなら何日でも収容継続してもらつてもよいと考えていること。同人の非行の原因のひとつが、適当な職業を見出すことができないまま、転職をくりかえし、その間しばしば失業、徒食の生活を送つていたことにあることなどの諸事実も認められる。
(3) そうすれば、同人が所定の職業訓練を修了することなく退院すれば、同人が上記の検定を受けることは非常に困難になることは明らかであり、そうなれば、同人に結局以前同様の生活を送らせ、再び非行に追いやることになる危険は大きいというべきであつて、現段階では在院者の非行の原因を除去するという正教育はまだその目的を達していないことになる。このような段階は、少年院法一一条二項にいう「犯罪傾向がまだ矯正されていない」場合に該当すると解するのが相当であるので、在院者に対し、同条三項、四項の規定に従い、主文のとおり決定する。
(裁判官 永山忠彦)